「情報ネットワーク法学会」の設立について

情報ネットワーク法学会設立準備委員会

 インターネットを含む情報ネットワーク・システムの利用は、あらゆる社会生活に急速な勢いで拡大しています。そこで発生する法的問題も、たとえば、電子取引、電子署名、ネット上の個人情報及びプライバシー保護、ネット犯罪、デジタル・コンテンツの知的財産権、電子メールの管理、ネット上の消費者保護など多岐にわたります。

 こうした情報ネットワーク上で起きる問題は、国境を越えて発生することが珍しくありません(グローバル性)。また、相手が誰であるかがよくわからない時があります(匿名性)。人間によってではなくプログラムによって自動的に発生させられる場合もあります(自動実行性)。そして、情報ネットワーク上のデジタル・コンテンツは、その複製も非常に簡単です(複製の容易性)。政府による個人の行動の監視もより容易になります(監視の容易性)。一方、個人の情報発信力も飛躍的に増大し、コンピュータ・ウィルス問題のように個人の犯罪的行為の影響も強大化しています。情報ネットワーク社会の出現は、国家と個人の関係、そして国家自身をも大きく変容させる可能性を秘めています。

 そこで私たちは、法律や情報技術を中心に哲学、経済学など隣接する学問領域を含めた研究者、立法、行政、司法、報道、企業、消費者団体など関係者に広く参加を呼びかけて、新たな法的問題を分析し、解決するための学会を設立することに致しました。

 本学会は、情報ネットワーク社会の健全な発展のために、法解釈だけではなく、新たな事象に対応する新たな社会制度や立法政策についても研究の対象とします。さらに、こうした研究の基礎となる法情報の体系を整備し、情報ネットワーク技術を利用して広く国民に提供し、だれもが活用できるような社会を目指しています。

 また、優れた法システムの構築のためには、法情報の公開と立法技術の非独占が不可欠であり、その下で様々な視点からの建設的な提言とオープンな議論が必要です。本学会では、このような目的と活動に参画できる人材を多数輩出するためのささやかな支援をもう一つの使命であると考えるものです。

 ぜひとも皆様のご賛同とご協力をお願い申し上げます。

  平成14(2002)年5月

情報ネットワーク法学会設立準備委員会 議長  町村 泰貴 (亜細亜大学)